マンションから一戸建てへの住み替えについて

I. 住み替えが増えている理由

さて、私は新築の一戸建てをメインに住宅を販売する仕事をしているのだが、ここ最近、分譲マンションを売って新たに一戸建てを買いたい、というお客様との取引が増えている。
以前からマンションからの住み替えという需要はあるのだが、最近特に増えているように感じている。
当社は小さい会社なので、取引数の分母が少ないため、たまたまと言われるかもしれないが、実績値としてはかなり増えているのが現実だ。

家を購入いただいたお客様とは、当然色んなお話しをすることになるのだが、その中で、どうしてマンションを売るのか理由を聞いている。

家が手狭になった

マンションを買った時とは家族構成は変わっていくものだ
小さかった子供は大きくなり、それなりに荷物は増えるし必要なスペースも増える。
新しく生まれた子供の事など想定しておらず、子供部屋を確保した代償に、夫婦の居所はなくなる。
名古屋市内のマンションは子供の駐輪スペースすら足りないという事案も多く、何かと不便を感じるようだ。

修繕積立金の値上がり

これはかなり憤りを感じる方が多かった。
新築時の修繕積立金額はほぼ確実に上がっていくと思って良い
というか元々上がって行く想定で計画が作られているマンションも多いはず。
私の知人は、マンションの理事長になって初めてこの事実に気付き、計画通りに積立金が上がっていくのなら、とてもじゃないけど住み続けられないと一戸建てに住み替えた。
数年後には当初の倍になるような計画だったというから、それは早めに脱出するべきであろう。
修繕積立金や管理がやたら高いマンションは売りにくい・・・買う側もバカじゃないので、しっかりここは見られると思った方が良い。

管理費の値上がり

ご多分に漏れず、管理費も値上げされる可能性がある
そもそも人件費や工賃が上がっているのだから当然ではあるが、安い管理会社に変えよう、と言っても一筋縄ではいかない。
管理会社が大手だから買ったんだ、という人もいれば、地場の安くてしっかりした管理会社に変えよう、という人もいる。
こういった話し合いが纏まらない事がそもそもストレスの原因になるらしい。

駐車場の確保

成長した子供の分の駐車場が必要になったり、大きな車に買い換えたりして、機械式には入らなくなったり、駐車場問題も結構大きい
そもそも自分の家なのに駐車場代はいつまでも払い続けなくてはならない。
敷地の広いマンションだと、駐車場に停めてから家に着くまでに5分以上かかったりするケースもある。
一戸建てだと車を降りて5秒で玄関だったりするので、この差は大きい。

1. 最近の住み替え事情

住み替えについての現状

マンションから戸建への住み替えについて、金銭的な問題で契約にまで至らなかったケースを含めると、潜在的なニーズはかなり多いように感じている。
と言うのも、分譲住宅を見に来る人の中に、一定数、分譲マンションにお住まいのお客様がいらっしゃるからだ。
実際に見に来る人だけでなく、資料請求いただく方の中にも分譲マンションにお住まいの人がそれなりにいらっしゃる。
以前は、マンションが売れる値段がローンの残高よりも低いため、売るに売れないというケースが目立ったが、昨今のマンション価格高騰によって、ローン残高より高く売れる確率が高くなっているのが、住み替えが増えている要因の一つだと考えている。

住み替えを決める理由

せっかく買ったマンションを売って、また大きな借入をしようというのだから、住み替えを決めるだけの大きな理由があるはずだ。
前述の通り、空間が足りない、という物理的な問題、減る事のない固定費への不満も大きいところだろう。
大所帯のマンションだと、世代もバラバラで世代間のギャップも問題になりがち。
公園で遊ぶ子供の声ですらうるさいと、老人がクレームをつけるというニュースを目にするが、同じ敷地内に住む人同士でこれが起きないとは限らない。
もちろん戸建でも起きうる事案ではあるが、同一敷地か敷地外かという違いは大きいように思う。
このようなプライバシーに関するストレスも住み替えを決める一因と言えそうだ。

2. マンションの住宅ローンの現状

マンションローンの残高と売却時のリスク

まず一番大きな問題は、今のマンションがいくらぐらいで売れるか、という事。
もし売れる金額が、ローンの残高よりも低い場合、その差額を現金で埋めないとマンションは売れない。
抵当権の設定がされているからだ。
現金がない場合はどうするのか。
残念だが、買い替えはかなり困難なものになる。
この差額を埋めるだけの資力がなければ、住み替えてもあまり良い未来は訪れないだろう。

あと、気を付けてほしいのが、マンションを売らせようとする不動産業者の査定は信じない方が良い
この金額で買います、という買取査定なら問題ないのだが、この金額で売りに出しましょう、という査定はアテにすると痛い目を見る。
彼らは売却の依頼を受けるのが目的なのだから、相場より高かろうが耳障りの良い話をしてマンションを売る気にさせるのだ。
そして、相場より高く、売れないだろうなと思いつつ、市場に売りに出す。
大抵の場合、最初の査定金額では売れず、そこから何百万も下がった金額で売却する羽目になる。

II. マンションから一戸建てへの移行の利点

1. 一戸建ての自由なカスタマイズ

車を大事にされている方も多いが、一戸建ての利点として、目の届く範囲に車が停まっているという点がある。
さらに、カーポートを設置したり、ゲートを付けたりして、愛車を見守るという事もできる。
玄関に宅配ボックスを設置したり、ガーデニングをしたりする事も、他人の許可は必要ない。

2. プライバシーの確保

最近のマンションは防音対策はしっかりされているようだが、それでも壁の向こうに他人がいるのは気を遣うもの。
特に子供が小さい時には、大きな声は出すし、走り回るものだ。
ハイハイから歩き出して喜んでいたと思ったらこれ、悩みの種になるというのも因果な物だ。
これは隣接している住人がどんなタイプなのか、でかなり変わるとは思う。
最近は喫煙の問題も大きいようで、たしかに下の部屋のバルコニーで喫煙されたらさぞイラッとするだろう。
一戸建てでも名古屋市内の物件は敷地が狭い物も多い。
が、しかし、さすがに子供が走り回るのを止める必要はないし、階下でタバコを吸われる事もない。

3. 広々とした生活空間

決定的な違いが、この生活空間の広さだろう。
名古屋市内のマンションはファミリー向けの部屋でだいたい70~80㎡ぐらいが平均だ。
これに対して一戸建てはだいたい100㎡ぐらいはある。
ローコスト住宅と呼ばれるコストを落とした住宅でも100㎡近くは確保できる。
この広さは決定的に違いが出る。
部屋の広さはもちろんの事、収納スペースも考えるとかなりの違いが生まれるはずだ。
手狭になった、というのが住み替えの理由として多いのだが、住む前に分からなかったのだろうかといつも不思議に思う。
この点については担当したマンション業者の営業マンを褒めざるを得ない。

4. 固定費(管理費や修繕積立金、駐車場代)からの解放

マンションの主な固定費といえば、管理費・修繕積立金・駐車場代である。
この中の修繕積立金については、一戸建てでも自己責任で修繕が必要なため、ある意味同等と考えられる。
ただし、修繕積立金が当初の金額では足りなくなり、増額が必要となったらどうしますか?
修繕費が足りないとなったらどうするのか、管理組合で総会を開いて議決するのだが、住民は選択を迫られる。
一括で数十万を出し合って足りない分を補填するのか、それとも毎月の修繕積立金を増額するのか。
聞くところによると、増額される金額も2~3,000円で済むような額ではなかったりする。
ややこしいところは、この増額を「仕方ないね、増やしましょう」とあっさり言える人と、「そんなに上がったら生活していけません」と死活問題となる人とが同じマンションに同居していることだ。
これは管理費にも同じ事が言える。

管理費も人によって捉え方が違う。
管理会社や管理人というのは、言わばお手伝いさんを雇って敷地内の管理・清掃を任せ、その対価としてお金を払っているのだ。
この金銭感覚に違いが出るのだが、できる限り管理会社に任せて、自分たちは楽をしよう、と考える人たち。
できる事は自分たちでやって、管理にかかる費用を減らそう、という人たち。
これは例えば、共用部分の照明など、ランニングコストのかけ方にもかかわってくる。
エントランスの照明が煌々と輝いている。この状態を良しとしてマンションを買った方もいれば、昼間にそんな照明はもったいない、節電だ、という方もいる。
どちらが正解とは言えないが、意見が割れ、自分の思い通りにいかないのはストレスに違いない。

さらに駐車場代
お金を出して買った自分の家なのに、駐車場代は毎月延々とかかっていく。
これは本当にバカにならない。
当社の近くでも月極駐車場は1台につき1.5万円程度が相場だ。
エリアによって相場はバラつくが、2台駐車しようとすれば、3万円前後が毎月のコストに上乗せされることになる。

お金がかかるものは仕方ないと言えば仕方ないのだが、問題は費用の掛け方を自分一人では決められないという点にある。
また、そもそもの計画が段階的に修繕積立金を増額していく予定になっているマンションも少なくない。
いずれこれだけ負担が増えていくのか、と思えば、良いタイミングで売ってしまおうという思惑も理解できる。

5. 自己資産としての価値

マンションは手離れが良い、一戸建ては売る時に値段が下がる、という風説を聞くが、私はそうは思わない。
マンションも一戸建ても両方仲介している私の感覚では、一戸建てを売りに出した時の方が、あきらかに反響が多い。
これは何故か。
中古市場の物件数を見たとき、マンションと一戸建ての物件数を比べれば、圧倒的にマンションの方が物件数が多い。
下記画像はスーモの物件掲載数だが、数を数えるまでもなく、圧倒的な差がある。
売り物が多ければ、特別な差別化ができている物件でなければ、価格競争に巻き込まれるのは必至。
中古の一戸建てはそもそも競合が少ないので、反響が多くなるのは当然か。

一戸建てでの場合は、最終的には土地で売れば良いので、場所さえ間違えなければ、負の遺産にはなりづらい。
一方、マンションは誰も住まなくなっても管理費・修繕積立金から逃れる事はできない。

III. 住み替えのプロセスと注意点

1. 住宅ローンの組み方

いざ、マンションから一戸建てに住み替えよう、となった時に問題になるのが資金面。
まだ住宅ローンが残っているのに、これはどうする?

大まかに3つある。

①先にマンションを売却してローンを完済してから、新しい住宅を買うパターン
②先に新しい住宅を購入して、引っ越した後にマンションを売却するパターン
③マンションの売却と新しい住宅の購入をほぼ同時期に合わせるパターン

もちろん③が一番理想なのだが、なかなかこれはうまくいかない。
マンション売却のタイミングを理想的な物にするため、不動産業者に買い取ってもらうという方法があるが、これは売却額が低くなるというデメリットがある。
それでも理想的な新しい住宅が見つかり、どうしてもそれを手に入れたいとなれば、このパターンがおすすめ。

①が一番安全に思われ、選択しようとする人が多い。
ただし、これも危険な部分がある。
マンションの売却が完了すれば住宅ローンが消えて、さぁゆっくり新しい住宅探しに集中できるぞ、となる。
だが、マンションが売却できたという事は住む家は無くなっているため、仮住まいの家が必要になる。
実家に一度戻るという荒業もあるが、現実的ではなく、賃貸暮らしを迫られるのだが、その間の家賃がもったいない。
理想の住宅が見つかるまで、賃貸の期間が続けば続くほど、無駄な出費が必要になる。

最近の取引事例で多いのが②だ。
ここにも落とし穴はある。
まず、マンションの住宅ローンを残したまま、新しい住宅ローンを組めるのかどうか、という点。
ほとんどの金融機関で、これはお断りされる。

では、みんなどうしているのか。
フラット35を利用している。
フラット35とは住宅金融支援機構が提供する住宅ローンで民間の金融機関よりも受け入れ間口が広い。
そのため、他の金融機関では断られるような、住宅ローンがあるにもかかわらず、新たに住宅ローンを組む、という方法が採れる。

ただし、下記3点には注意が必要だ。

①長期固定金利のため、一般的に利用される変動金利よりも金利が高くなり、支払額が大きくなる。
②現在のマンションの売却を不動産会社に委託している事が条件となる。(媒介契約書が必要)
③マンションが売れるまで、マンションのローンと新しい住宅ローンのダブルローンになり、毎月の支払が一次的に増加する。

このようなデメリットもあるが、次のメリットがあるため、この方法が採用される事が多い。
①引っ越ししてからマンションの売却活動ができるため、家具等のないスッキリした部屋をみせる事ができ、成約率が上がる。
②居住中にマンション販売をする場合、見学のたびに同席し、成約までストレスの日々を送る事になるが、それがなくなる。
③住み替えのタイミングで賃貸に仮住まいをする必要もないので、余計な費用が発生しない。
④金利が高いとはいえ、マンション売却後に売却益を繰り上げ返済に充てる事で、返済額を減らす事ができる。
⑤欲しいと思える物件を見つけたタイミングで住み替えを実行できる。

個人的には⑤が一番大きいと思う。
せっかく住み替えするのだから、自分たちが「これだ!」と思った物件を買う事を目的にしてほしい。
決して、はした金を手に入れるために住み替えを考えてはいけない。

2. マンションの売却

この記事を書いている時点で2023年なのだが、ここ数年、名古屋の住宅値上がり率はすごい。
新築のマンションが値上がりしているおかげで、中古の相場が下がらないのだ。

私は昔、こんな格言を聞いた事がある。
「家は買った瞬間に値段が下がる」と。

あれは完全に嘘だ。

私は不動産業界に入ってもうすぐ20年経つのだが、さっさと買った人の方が得をしている。

適正な値段で購入して、とんでもないオーバーローンを組んでいない限り、名古屋市内のマンションならローン残高よりも売却可能額の方が大きくなるのではないかと思う。
当然、この金額の査定には注意が必要なので、信頼度の高い不動産会社に固い査定をしてもらうべきだろう。
ちなみに大手だからと言って信頼度が高いわけではないので、ここは本当に注意をしてもらいたい。

3. 一戸建ての購入

一戸建ての選び方だが、これは人によって条件は違う。
部屋の広さを求めるのか、それとも敷地の広さを求めるのか。
住み替えするという事は、それなりの年齢になっていると思われるので、終の棲家と言っても過言ではない。
より良い物件に巡り合えるよう、物件を選んでほしい。
戸建だからといって何でも良いわけではない、将来の資産性も含めてよく検討してほしい。

4. 住み替えた場合の支払い比較

住み替えるべきか、住み続けるべきかは、実際の支払がどう変化するのか、で検討していただきたい。
当社にご相談いただければ、現在の支払と将来の支払いを比較したシミュレーション表を無料で作成いたします。
是非、お気軽にご相談ください。

という宣伝はこのへんにして、実際にマンションから一戸建てに住み替えられたお客様の例を挙げておきます。

<マンションの支払><一戸建ての支払>
ローン返済額88,000円133,000円
修繕積立金10,000円10,000円
管理費16,000円0円
駐車場(1台目)0円0円
駐車場(2台目)10,000円0円
合計124,000円143,000円

これが当初の資金計画で総額で1.9万円高くなる。
ただし、このお客様の場合、マンションを売却する事で700万円の差益が生まれた
これを繰り上げ返済に充てていただく事で、ローン返済が109,000円まで圧縮され、結果的にはマンション時代よりも毎月5,000円のコストが減った

仮に毎月の支払が上がったとしても、それに対して得られる物がどれぐらいあるのか、という部分に焦点を当ててもらいたい。
このお客様はお子様が3人で耐えられないほど手狭になっていたらしく、広い家を手に入れられてとても満足していただいた。
10年で700万円の利益が出て、若い時にマンションを買った事は正解だったという結果となった。

V. まとめとお問い合わせ

1. 住み替えのメリットの再確認

今のマンションに何も不満はない、という方はもちろん住み替えなど考える必要はないし、この記事も見る事はないだろう。
逆にここまで目を通した方は何らかの住み替えたいという気持ちがあるのではないか。

ここで住み替えのメリットをおさらいしておく。

  1. 空間の自由度 一戸建てへの移行は、生活空間の拡大と自由度の増加をもたらします。家族構成の変化に対応する余裕も生まれます。
  2. 固定費の管理 一戸建てでは、マンションのような修繕積立金や管理費が存在しないため、コストのコントロールが可能になります。
  3. 駐車場の確保 一戸建てでは自家用車の駐車場を自由に確保できます。これは都市部では大きなメリットと言えます。
  4. プライバシーの確保  一戸建てはプライバシーを確保しやすく、世代間のギャップや騒音問題からも解放されます。

注意点についてもまとめておく。

そもそも、マンションから一戸建てへの住み替えを検討している理由は何なのか。
それを明確にしてから始める事を強くお勧めする
不満を解消するために一戸建てに住み替えるなら、新たな不満が出ないように気を付けて選ぶ事。
例えば、一戸建てはマンションと違って、修繕積立金は存在しないので、その分のお金は自己負担になる。
なので、一戸建てに住み替えてからも、修繕積立金を捻出するための計画をしっかりと立てておくべきだろう。
また、一戸建てに住み替える前に、いつまでにマンションを売りたいのか、そのタイムスケジュールを決めておくことも大切だ。
買いたい一戸建てが見つかった時に、すぐにでも契約したいのなら、住宅ローンの資金計画を早めに考えておくと良い。

そして、一戸建てへの住み替えを検討する上で、マンション売却の査定額がいくらであれ、自分自身で市場価格を確認することが重要である。
マンション売却の相場感を把握するためにも、実際に不動産業者に査定を依頼する前に、自分で情報収集をするとよいだろう。

2. お問い合わせ

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます。
実際にマンションの住み替えを検討したいお客様がいらっしゃいましたら、是非下記フォームよりお問い合わせください。
秘密厳守で最善のご提案をいたします。