事故物件を契約してしまった時はどうすれば良いのか

なかなか衝撃的なタイトルですが、これは実際にご相談いただいた本当にあったお話しです。
なんと、ご相談者の方は当ブログをご覧いただき、ワラにも縋る思いでご連絡をいただいたようです。

無駄に人が良いからなのか、せっかくご連絡いただいたので、一般論でお答えしますとご相談に応じました。
そんな事故物件を契約してしまったケースの一部始終をご覧ください。

契約した物件が事故物件だった

ローン特約で解除ができるという記事を読んだ上で相談したいのだが、事故物件を契約してしまった場合でもローン特約は使えますか?
実は今日、銀行でローンの本申込を予定しているのだが、このまま申し込みをしてしまって大丈夫なのか?

このような第一声でした。
これは大変そうな状況ですが、情報の整理が必要です。

まず、ローン特約での解除というのは、住宅ローンを正式に申し込んだにもかかわらず承認されなかった場合に解除ができる、という権利になるため、事故物件とローン特約というのは何の因果関係もなく、このケースにローン特約での解除というのは適用されません。

せっかくブログを読んでいただいたんですが、ちょっと違うんです、とお伝えしたうえで、状況を確認しました。

  1. 売買契約というのは手付金も支払った正式な契約なのか(単なる申込等ではないか)
  2. 売主は不動産業者なのか一般個人なのか
  3. 事故物件というのを知らずに契約したのか
  4. 重要事項説明時にその説明は無かったのか、重要事項説明書にその記載は無いのか
  5. 事故物件という事実はどの程度の信憑性があるのか
  6. 事故物件とされる具体的な内容は何なのか

これらをヒアリングした結果、次のような状況である事が分かりました。

  1. 既に正式な売買契約を締結しており、50万円の手付金も支払い済みである
  2. 売主は宅建免許を持った不動産業者で、仲介業者も入っている
  3. 事故物件とは全く知らずに契約した
  4. 重要事項説明ではそんな説明を受けておらず、書面にも書いていないはず
  5. 近所に住んでいるというおばさんに話を聞いた。とても具体的でわざわざそんな嘘をついているとは思えない
  6. 中古戸建を契約したのだが、その家の2階で首吊り自殺があったと聞いた

これが事実だとすると、とてもじゃないですが、このまま物件を買うわけにはいかないでしょう。どうやったら解約できるのか、色々と検索されたんであろうと想像できます。
質問いただいたローン特約での解除とは全く関係ありませんが、別の事由を根拠に契約を解除できる道筋は見えます。

事故物件には告知義務がある

自殺・殺人・孤独死・事故死というように、知ってれば契約しなかったような内容の事を心理的瑕疵と呼んでいます。これは実際にどこからを心理的瑕疵とするかは明確にはなっていないのですが、自殺というのは心理的瑕疵に該当するであろうと思います。

このような心理的瑕疵がある物件については、告知義務があり、売主または仲介業者が知っていて言わなかった場合は、告知義務違反を理由として契約の解除を請求する事ができます。

売主が知らなかった場合は、告知義務違反を免れるケースもあるようですが、少し調べれば分かるような内容については不動産業者の調査義務違反に該当するケースもあります。

今回のように、物件の近所の方が教えてくれたという事は簡単に手に入る情報だったという事が言えると思います。

というわけで、売主または仲介業者がこの心理的瑕疵を知っていたとしても、知らなかったとしても、買主側から心理的瑕疵を根拠に契約の解除・手付金の返還を要求する事ができるのではないか、と考えました。

むやみに争うべきではない

売主サイドがこの事実を知っていたかどうか、は定かでありませんが、よほど悪質な業者でない限り自殺物件である事を黙って契約するというのは考えにくい状況でした。
今回のように近所で有名な話であれば、いずれ購入者の耳に入る可能性が高いですし、物件自体もそれほど高額ではなかったため、リスクを冒すほどのリターンが無いように思いました。

これはもしかして、売主サイドも知らないのではないか

私はそう考えました。
そこで、今回の相談者の方にはこうアドバイスしました。

物件を見に行った時に近所の方に聞いた事をそのまま伝えてください。そして、自殺があった事を知っていたら契約はしていなかったという事を伝え、契約解除の意思表示をしてください。
喧嘩腰でいく必要はありません、あなたに有利な状況は揃っていますが、強制的な解除は裁判を経ずして出来ません。あくまで相手方と合意して解除するが優先で、喧嘩しても何のメリットもありません。

物件を見に行った時に近所の方に聞いた事をそのまま伝えてください。そして、自殺があった事を知っていたら契約はしていなかったという事を伝え、契約解除の意思表示をしてください。

喧嘩腰でいく必要はありません、あなたに有利な状況は揃っていますが、強制的な解除は裁判を経ずして出来ません。あくまで相手方と合意して解除するが優先で、喧嘩しても何のメリットもありません。

ここまでお話しさせていただいて、電話を終えました。
最後に、もし良かったら事の顛末をまたご連絡ください、と伝えて。

事故物件の契約は解除できたのか

後日、相談者の方からお電話をいただき、今回の結果を知る事ができました。

私と電話した後、仲介業者に話に行ったそうです。私のアドバイス通り仲介業者に伝えたところ、どうやら相手方も知らなかったのか、すぐ確認するという回答で一旦保留になったそうです。
仲介業者が現地にて、近隣の方からやはり当該物件で自殺があったという事実をヒアリングできたようで、これをもって無事に売買契約の解除・手付金返還となったようです。

お電話での無料相談なので、何の仕事にも繋がっていないわけですが、こうやって新しい1ページが作れたわけで、めでたしめでたしとしておきましょう。(今回の相談を記事にして良いと承諾いただいています。)

最後までお読みいただきありがとうございました。