住宅購入前に知っておきたい建築基準法・都市計画法の基礎知識
はじめてマイホームを購入・建築しようとするとき、耳慣れない法律用語がいろいろ出てきて戸惑いますよね。建築基準法や都市計画法に関する用語(例えば「都市計画区域」「用途地域」「建ぺい率」「容積率」など)は難しそうに感じますが、実は住宅選びに直結する大切なポイントなんです。ここでは、30代前後の一次取得者の方に向けて、「住宅購入 × 建築基準法」のキホンをやさしく解説します。専門用語も具体例や噛み砕いた説明を交えますので、「なんとなく聞いたことあるけどよく知らない」という方もぜひ参考にしてくださいね。
都市計画法・建築基準法
まず押さえておきたいのが都市計画区域という考え方です。ざっくり言うと、都市計画区域は「計画的にまちづくりを進めるエリア」を指します。市街地として整備すべきエリアを行政が指定しているイメージです。逆に人家の少ない山間部などは都市計画区域外とされ、当面は市街地を計画的に整備しない地域ということになります。さらに、市街地ほどではないけれど将来的に一定の開発が見込まれる地域は準都市計画区域といって、必要最低限のルールだけ設けてある場合もあります。
具体例: 名古屋市のような都市部はほぼ全域が「都市計画区域」に指定されています。一方、郊外の山林や農地が広がる地域では「都市計画区域外」も存在します。都市計画区域外では建築物に関する細かい計画規制(用途地域など)が原則ない分、逆にインフラ整備が追いつかないなどの理由で住宅の建築が難しいケースもあります。通常、マイホームを建てようとする土地は都市計画区域内にあることがほとんどなので、「ここは都市計画区域内かな?」と確認しておくと安心です。
用途地域って何?
用途地域(ようとちいき)とは、一言でいうと「土地の利用方法や建てられる建物の種類をエリアごとに定めた都市計画上の区分」です。都市計画区域内は用途に応じて13種類の地域に細かく分けられており、地域ごとに建てられる建物の用途や大きさにルールがあります。その結果、「地域ごとに住み心地や街並みが異なる」ようにコントロールされているのです。
なぜこんな区分けをするかというと、住宅地の真隣に巨大な工場や歓楽街ができてしまったら困るからです。例えば静かな住宅街の真横に深夜まで営業する商業施設や騒音の出る工場が建ってしまったら、日当たりや静けさが損なわれて住みにくくなってしまいますよね。そこで都市計画法にもとづき、「ここは住宅中心の地域」「ここはお店OKの商業地域」「ここは工場も建てられる工業地域」といった具合にエリア分けして、用途ごとの調和を図っているわけです。結果的に地域の利便性や住環境が守られ、街全体が健全に発展することが期待されています。
用途地域は現在全部で13種類あり、大きく住居系(8種類)・商業系(2種類)・工業系(3種類)に分類されています。名前も「第一種低層住居専用地域」から「工業専用地域」までいろいろあります。一見ややこしいですが、住宅を建てられる地域なのか、お店や工場も建てていい地域なのか、といった違いです。住宅選びの際は、その土地の用途地域がどの種類なのか確認することで、「将来この周辺はどんな街並みになるか」「自分の希望する暮らしに合った地域か」を考えるヒントになりますよ。例えば第一種低層住居専用地域なら将来的にも高層マンションや大規模商業施設が建つ心配は少なく、静かな戸建て街区が保たれるでしょう。反対に商業地域であれば利便性は高いですが、人通りや車の往来が多かったり夜間も明るかったりといった環境になる可能性があります。こうした特徴を踏まえてエリアを選ぶことが、満足のいくマイホーム計画につながります。
建ぺい率・容積率とは?
不動産広告を見ると必ずと言っていいほど記載されているのが建ぺい率と容積率です。これらは敷地(土地)に対する建物の大きさの制限を表す指標です。ざっくり言うと、建ぺい率は「建物が敷地面積に対してどのくらいの面積を占めているか(建築面積の割合)」を指し、容積率は「建物の延べ床面積(各階の合計)を敷地面積に対する割合」を指します。いずれもパーセンテージ(%)で表示され、「この土地には〇%までの建物しか建てられませんよ」という上限値が決められています。
例えば、敷地面積100㎡で建ぺい率50%なら、建物の1階部分は敷地のうち最大50㎡までしか建てられません。残りの50㎡は庭や駐車場など建物のない空地として残す必要があるイメージです。仮に建ぺい率をオーバーする建物を建ててしまうと法律違反となり、建築許可が下りないだけでなく、将来的に増改築もできず金融機関の融資も受けられない(違反建築物扱いとなるため)という大きなデメリットがあります。容積率については、例えば容積率150%・敷地100㎡なら、延べ床面積の合計を150㎡までにしなければなりません。2階建てにする場合は単純計算で各階75㎡ずつ、3階建てなら各階50㎡ずつ、というイメージになります。容積率を超える延べ床面積の建物も同様に認められませんので注意が必要です。
では、なぜこんな制限があるのでしょうか? 実は建ぺい率・容積率にもちゃんと理由があります。建ぺい率については、隣り合う建物同士が敷地ぎりぎりまでびっしり建ってしまわないよう一定の空間(ゆとり)を確保するための制度です。適度な空地があれば火災が起きても延焼を防ぎやすく、地震で建物が倒壊してもお隣にドミノ倒しになりにくいという防災上のメリットがあります。また、お互いの日当たりや風通しを確保したり、街の景観を保つ目的もあります。一方、容積率は敷地に対してあまりにも大きな建物(高層建築物)が建ち並ぶのを防ぐ目的があります。容積率のおかげで住宅密集地でも空が見えないようなビルだらけの街にはなりませんし、結果的に人口密度の調整にもつながっています。「容積率いっぱいに建物を建てられるなら高い建物をどんどん建てれば得じゃないか」と思うかもしれませんが、容積率の制限がないと一極集中で交通渋滞やインフラ過密など暮らしにくい街になってしまいます。適度なボリュームの建物に制限することで、快適で安全な暮らしを守っているんですね。
豆知識
建ぺい率や容積率は、その土地ごとにバラバラに決まっているわけではなく 用途地域ごとに上限値 が決められています。住居系の用途地域なら建ぺい率はだいたい40~60%程度、商業系なら80%なんて場所もあります。また前面道路の幅が狭い土地では、容積率が法律上の数値よりさらに厳しく制限されるケースもあります。これを「道路幅による容積率制限」といって、幅員4m未満の道路に接する敷地だと大きな建物は建てられない仕組みになっています(道路が狭い場所に人が集まりすぎるのを防ぐためです)。細かな規定はありますが、専門的な内容になりますので、具体的に気になる土地が出てきたら不動産会社や建築士に確認してもらうとよいでしょう。
高さ制限もチェック!
建物の高さ制限も住宅計画には重要です。高さ制限とは文字通り「そのエリアでは建物の高さは○m以下まで」といった決まりのことですが、一律ではなくいくつか種類があります。代表的なものを挙げると、以下の4種類の規制です。
絶対高さ制限
主に低層住宅エリアで「○mを超えては建てられない」という高さの上限を定めるルールです。たとえば第一種・第二種低層住居専用地域では建物の高さが10mまたは12m以下に制限されています。住宅街にいきなり背の高いビルが建って日当たりが悪くなった…なんてことが起きないようにするための規制ですね。自治体の都市計画で「この地域は高さ10mまで」と具体的に定められます。
高度地区による高さ制限
地域ごとに「将来的にこのくらいの高さまでの建物に抑えよう」という都市計画で決める制限です。絶対高さ制限と似ていますが、低層住宅地以外でも定められることがあり、例えば「○○地区高度地区(最高限20m)」のように指定されます。
斜線制限
建物の高さを境界線や道路中心線からの後退距離に応じて制限するルールです。難しく聞こえますが、「お互いの敷地の境界付近ではグッと高い壁のように建てるのは禁止。高くしたければ少し離れて建ててね」というイメージです。具体的には「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」の3つがあり、日当たりや圧迫感への配慮として建物上部をナナメにカットするような形になります。住宅地では特に北側斜線(北側隣地への日照確保のため)が重要で、北隣のお宅に影を落とさないよう自分の建物の高さに傾斜制限がかかります。
日影規制
中高層の住宅が建つエリアで適用されるルールで、その建物が冬至日時の一定時間以上隣接地に影を落としてはいけない、という規制です。主に中高層住宅地(第一種・第二種中高層住居専用地域など)で指定され、背の高い建物は敷地から離して建てたり高さを低く抑えたりする必要があります。お互い様に日当たりを確保しようという目的ですね。
このように高さ制限にも色々ありますが、基本的には「周囲の環境に見合った高さに抑えることで、住環境を守る」という発想にもとづいています。低層住宅エリアなら低層らしく、高さを抑えて空や陽射しの見える街並みにする。一方、都市の中心部など高さが必要な場所ではある程度許容するといった具合です。なお高さ制限は用途地域ごと・地域ごとに細かく決まっていますので、注文住宅を建てる際には設計士さんがしっかり確認して計画してくれます。ご自身で土地を探す段階では、「極端に背の高い建物はこの辺りには建たないんだな」程度に認識しておくと良いでしょう。
接道義務(道路に2m以上接する必要性)
接道義務(せつどうぎむ)とは、建物を建てる土地が「道路に2メートル以上接していなければならない」という建築基準法上のルールのことです。簡単に言うと、家を建てたい土地は幅4m以上の道路に2m以上くっついていないとダメですよ、という決まりです。奥まった旗竿地(はたざおち)のように細い通路でしか道路に出られない土地だと、この基準を満たせない場合があります。その場合どうなるかというと…原則その土地には家を建てることができません。「再建築不可物件」と呼ばれることもありますが、せっかく手に入れた土地でも家を建てられないのでは意味がありませんよね。古家付きの土地で格安だけど実は接道義務を満たしておらず、建て替えができない—なんてケースもあるので要注意ポイントです。
なぜ道路に2m以上接していないといけないかというと、万が一の災害時に緊急車両が入れないと困るからです。建築基準法では道路の幅も原則4m以上必要としていますが、これは消防車がだいたい幅2.5mほどあるため、消防車が通行・活動できるスペースを確保するためなんですね。さらに敷地の出入口が2m以上あれば、いざというとき人がすれ違ったり避難したりもしやすくなります。実際、接道義務を満たしていないと火事で消防車が入れなかったり、救急車で担架を運び出せなかったりと安全上のリスクが高まります。こうした理由から法律で最低限の接道条件が課されているのです。
例外は?
接道義務には一定の例外規定もあります。たとえば「周りに道路がなくても代わりに広い空き地があって避難できる場合」や「特定行政庁の許可を受けた通路が確保できる場合」などです。しかし一般的な住宅購入ではあまり出てこない特殊なケースです。基本的には「道路にしっかり接している土地かどうか」を確認し、怪しい場合は不動産会社に「この土地は再建築できますか?」と尋ねてみましょう。接道義務を満たしていない土地は資産価値の面でも不利になりますので、購入は慎重に検討する必要があります。
防火地域・準防火地域とは
都市部で家を建てるなら防火地域や準防火地域についても知っておきましょう。これは都市計画法にもとづいて指定される防災上のエリア区分で、「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」とされています。簡単に言えば火事に強い街にするための地域指定です。指定される場所は多くの場合、駅前やビルが密集している繁華街、幹線道路沿いなど人や建物が密集し火災時に延焼しやすいエリアです。駅前の密集地は火事が出たとき燃え広がらないように、幹線道路沿いは火災時に消防車などの緊急車両の通行を確保する目的で指定されます。その周囲には準防火地域が指定されることが多く、防火地域ほどではないにせよ火災リスクに備えるエリアとなっています。
防火地域や準防火地域に指定された土地では何が変わるの?
一番大きなポイントは、建てる建物の構造や素材に一定の制限がかかることです。具体的には、防火地域内の建物はすべて耐火建築物または準耐火建築物(火災に強い構造の建物)にしなければなりません。簡単に言うと木造家屋でも耐火性能の高い特殊な作りにする必要があり、コンクリート造などで建てるのが一般的です。準防火地域の場合は防火地域より規制が緩やかで、一定規模以下の住宅であれば木造でも大丈夫ですが、それでも屋根に不燃材料を使うなど細かなルールがあります。
防火地域で家を建てる場合、使用できる建材や工法が限られるためコストが割高になる傾向があります。例えば耐火仕様の窓ガラスや防火サッシ、難燃性の外壁材など、一般的な住宅より高性能な部材が必要です。そのぶん火災保険の優遇が受けられるメリットもありますが、予算計画には余裕を持った方がよいでしょう。とはいえ防火地域に指定されるのは便利な都心部が多いですし、建ぺい率が優遇されて敷地を有効活用できるメリットもあります(耐火建築物なら防火地域内で建ぺい率が緩和される規定があります。メリット・デメリットを踏まえつつ、「自分の建てたい家はそのエリアの防火規制でどんな制限があるのか?」を事前に確認しておくことが大切です。不安な場合は工務店や不動産会社に相談すれば、その土地で可能な建築プランを教えてもらえます。
ちなみに分譲住宅(建売住宅)なら、これらの制限はクリアして建てられているので、防火地域・準防火地域だからといって表示価格よりも高くなる事はないので安心です。
耐震基準はここをチェック!
日本は地震大国ですから耐震基準も重要です。建築基準法の耐震基準はこれまで何度か改正されてきましたが、大きな改正があったのが1981年(昭和56年)です。この年に新耐震基準が導入され、現在もその基準がベースとなっています。新耐震基準では「震度6強~7程度の大地震でも倒壊しない」強度が求められています(それ以前の旧耐震基準では「震度5強程度で倒壊しない」という基準だったので、大地震への備えが大きく強化された形です)。
実際、1995年の阪神淡路大震災では旧耐震の建物に倒壊被害が多く、新耐震基準の有効性が確認されました。この反省を踏まえ、2000年にも耐震基準のさらなる強化が行われています。特に木造住宅向けの構造金物の規定強化などが行われ、2000年以降に建てられた住宅はより耐震性が高いとされています。
では自分の家は大丈夫? これから新築する場合はもちろん最新の耐震基準で設計されますので安心です。ただし中古住宅を購入する場合は要チェックポイントになります。1981年以前に建てられた家(旧耐震基準の家)は耐震補強が必要なケースもあります。建築年月日は不動産の重要事項説明でも必ず確認できますから、「昭和56年6月より前の建物なら耐震診断を受ける」「できれば新耐震基準以降の建物を選ぶ」ことをおすすめします。自治体によっては中古住宅の耐震改修に補助金が出る制度もありますので、もし旧耐震のお家をリフォームしながら使いたいときは積極的に活用すると良いでしょう。大切なマイホームですから、地震に強い安心の住まいを選んでください。
最近の新築住宅は当然ながら最新の耐震基準ですし、耐震等級という性能表示を取得している住宅も多いため、過度に心配する必要はありません。
まとめ:プロにご相談ください
ここまで都市計画法・建築基準法に関わる基本的なポイントを解説してきました。専門用語が多くて大変…と感じたかもしれませんが、実際に住宅購入や建築を進める際には不動産会社や建築のプロのサポートを受けることが何より大切です。プロであれば、今回紹介したような法令上の制限を踏まえて希望に合う土地かどうかを的確にアドバイスしてくれますし、素人では見落としがちな注意点も丁寧に教えてくれます。「この土地は建ぺい率オーバーの増築はできないけど大丈夫?」「接道状況が微妙だけど再建築可能かな?」といった疑問も、遠慮なく相談して解決しましょう。
私たちランドアーズも名古屋の不動産会社として、みなさまのマイホーム探しを全力でサポートいたします。法律的な難しい確認事項こそプロの出番です。ぜひお気軽にご相談いただき、安全・安心で理想の住まいを一緒に実現しましょう!